こんにちは、設備の南です。
この記事では湿り空気線図の基本について解説します。
湿り空気線図とは
水蒸気を含まない空気を乾き空気と言い、水蒸気を含んだ空気を湿り空気と言います。
この湿り空気の状態量として以下の要素があります。
- 乾球温度 t
温度計の感熱部を乾いた状態で測った温度
単位:℃ - 湿球温度 t’
温度計の感熱部を湿った布などで包んだ状態で測った温度
飽和空気の場合:t’=t 不飽和空気の場合:t’<t
単位:℃ - 露点温度 t”
湿り空気が飽和空気となって水蒸気が結露する温度
単位:℃ - 絶対湿度 x
乾き空気1[kg]当たりに含まれている水蒸気x[kg]
単位:kg/kg(DA)
kg(DA)…湿り空気中の乾き空気(Dry Air)のみの質量[kg] - 相対湿度 φ(又は飽和度 ψ)
空気の水蒸気量と同圧同温の飽和空気の水蒸気量との比
単位:% - 比体積 v
乾き空気1[kg]を含む湿り空気の体積
単位:m³/kg(DA) - 比エンタルピー h
乾き空気1[kg]当たりの内部エネルギー及び空気が外部にする仕事の熱量換算値
単位:kJ/kg(DA) - 水蒸気分圧
水蒸気のモル分率と湿り空気の全圧との積
単位:kPa - 顕熱比SHF(Sensible Heat Factor)
顕熱変化と全熱(顕熱+潜熱)変化の比
空気の全圧力を一定とした場合、状態量のうち2つが定まると他の状態量も定まります。
よって、いずれか2つの状態量を座標軸とした種々の湿り空気線図を作ることができます。
一般的な湿り空気線図として下のh-x線があります。
湿り空気h-x線図は、比エンタルピーhと絶対湿度xを斜交軸とした湿り空気線図です。
空調の負荷計算や空気の状態変化の解析に使用されています。
湿り空気線図の使い方
湿り空気線図では、2つの要素が定まると他の状態量を読み取ることができます。
どのような手順で読み取るのか次の例で確認します。
例.乾球温度t=28℃、相対湿度φ=50%の場合
- 定まっている2つの要素の交点を求める。
乾球温度28℃と相対湿度50%(実線の曲線)の交点(上図赤点)を求める。 - 求めた交点を起点として各要素のグラフ線に沿って線を延長する。
比エンタルピー:青線
湿球温度:緑線
絶対湿度、水蒸気分圧、比体積、露点温度:オレンジ線 - 各要素軸と延長線の交わるところから値を読み取る。
比エンタルピー:58.5kJ/kg(DA)
湿球温度:20.4℃
露点温度:16.5℃
絶対湿度:0.0118kg/kg(DA)
水蒸気分圧:1.9kPa
比体積:0.87m³/kg(DA)
定まる2つの要素が乾球温度、相対湿度以外の場合も同様の手順で他の状態量を読み取ることができます。
最後に
この記事では湿り空気線図の基本について解説しました。
湿り空気線図を使うと湿り空気を構成する要素の状態量を知ることができるため、空調設備の冷房、暖房、加湿、除湿による状態変化の予想に用いることができます。
今後、湿り空気線図を空調設備へ応用する方法について解説する記事も作成したいと思います。